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Column
presented by Wochenmagazin "Gold"
Author Glyzinie Blauregen

-庭園提言-
2008年9月22日号
22ページで紹介した稀代のチェスプレイヤー、ヴェンツェル・ツア・ミューレンは、少年期に名を轟かせ、成長した今でもその地位を築いている若き天才だ。いざチェスセットと向き合うと、まるでチェスを何もわかっていない子供の玩具遊びのように駒をつついては立て直したり、手のひらの上で弄ぶ。
一見するといい大人がごっこ遊びしてるか、日本の漫画とかに出てくる悪役の仕草のような見るに耐えない光景だろうが、その間で彼の脳内では溢れんばかりの可能性の研究が進んでいるのだとか。他人の脳内のことなどよくは知らんが。
しかしそうして研究され尽くしたタクティクスは見る人を必ず圧倒させる。あの棋譜はハッキリ言って私でも理解できない。だから彼がありふれたオープニングで挑む事は稀だと思え。
きっと気分の問題でもある。
ところで、ああ見えてヴェンツェルには嫌いなものが多いらしい。ワインが苦手という話は有名だが、私は彼に直接取材を申し込んで5分だけ応答してもらった際に、新たな情報を入手できた。なんて幸運だろう。
彼はどうも甘いものが好きじゃないようで、特にチョコレート系の甘さが嫌いだと語ってくれた。フルーツのような味は物によるが食べられはすると聞いた。もしも手土産に持ってこられたら嬉しいフルーツは何か、と訊くと「リンゴ」と小声で答えてくれたから、このコラムを見ている人がいたらヴェンツェルへのファンレターにリンゴを添えて送ってみてはどうだろうか。
ただし、リンゴフレーバーのチョコレートとかいう嫌がらせはしないように。

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